商品を輸入して販売する場合の行政手続きについて(食品用器具編)


商品を輸入して販売する場合、様々な法律への配慮が必要になります。

今回は、保温水筒(魔法瓶)を輸入する場合を、例にご紹介します。

確認のポイント

■食品衛生法の確認:

輸入する食品用器具が日本の食品衛生法に準拠しているか確認することが重要です。食品衛生法は、食品の製造、輸入、販売に関する基準や規制を定めています。

 

■JIS認証の確認:

特定の食品用器具には日本工業規格(JIS)の認証が必要な場合があります。これは製品の品質と安全性を確保するための基準です。

 

■家庭用品品質表示法の確認:

消費者が日常使用する家庭用品を対象に、商品の品質について事業者が表示すべき事項や表示方法が定められているので、それを遵守することが求められます。

 

■税関への輸入申告:

輸入品に関する申告を行う必要があります。食品等輸入届出書を提出し、正確な情報を提供し、輸入品の衛生検査や清潔な取り扱いが求められます。

 

■関税・輸入税の確認:

関税や輸入税の詳細について確認し、必要な支払いを行う必要があります。

 

■商標登録と知的財産権の保護:

輸入する食品用器具に関連する商標や知的財産権を保護するために、商標登録や特許の確認を行うことが考慮されます。

▼全体の流れ

参考:ニプロ食品用器具輸入の手引き2021

https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/pdf_publications_0108fm14.pdf



食品衛生法の確認

<食品衛生法の対象となる「器具」について >

■飲食器

カップ、皿、タンブラー、はし、スプーン、ナイフ、フォーク、ほ乳用具、 ストロー、等

■割ぽう具(調理用具)

包丁、まな板、なべ、フライパン、ボウル、おたま、等

■食品に直接接触する 機械、器具等

・食品の製造、加工、調理用(製造工場のコンベア・パイプ・ホース等。コー ヒーメーカー、ジューサー、ミキサー、スライサー、パスタマシン、等)

・貯蔵・運搬用(タンク、ボトル、コンテナ、冷蔵庫、水筒、調味料入れ、 等) ・陳列販売用(食品トレー、かご、等)

 

食品用器具を輸入する者は、食品衛生法に基づく輸入届出関係書類の準備をし、検疫所に輸入届出をします。

検疫所の審査の結果、適法と判断されると「食品等輸入届出済証」が輸入者に返却されます。

税関で輸入申告を行う際に、この届出済証を添付し、輸入が許可されると、販売等が可能になります。

 

参考:ニプロ食品用器具輸入の手引き2021

https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/pdf_publications_0108fm14.pdf

 

JIS認証の確認

魔法瓶の場合は、下記に適合しているか確認する必要があります。

■JISS2006:2019 まほうびん(JISの簡易閲覧)

https://kikakurui.com/s/S2006-2019-01.html

家庭用品品質表示法の確認

「家庭用品品質表示法」は、消費者が日常使用する家庭用品を対象に、商品の品質について事業者が表示すべき事項や表示方法が定められています。

 

魔法瓶の例としては、次のように定められています。

1.品名

  • 次の表に掲げる魔法瓶の種類に応じ、それぞれ同表に掲げる用語を用いて表示する。

   魔法瓶の種類

    ➀ ガラス製卓上用魔法瓶 :中瓶にガラス製の真空二重瓶を使用したものであって、主として屋内で使用されるもので、通常外装に蓋及びハンドル又はつり手を付けたもの

        ②ステンレス製携帯用魔法瓶 : 内瓶にステンレス鋼製の真空二重瓶を使用したものであって、主として飲用水に用い屋外に携帯するもの

        ③ステンレス製卓上用魔法瓶 : 内瓶にステンレス鋼製の真空二重瓶を使用したものであって、主として屋内で使用されるもので、通常外装に蓋及びハンドル又はつり手を付けたもの

2.実容量

  • 製品に付属の中栓をしたときに実際に入る容量をリットル単位で表示する(許容範囲は、表示値の±5%以内)。

3.保温効力

  • 室温20°C±2°Cにおいて2時間以上開栓して放置した製品に付属の中栓をしたときの中栓の下端まで沸騰水を入れ、湯の温度が95°C±1°Cになったときにその製品付属の中栓等をした後、一定時間放置した場合のその湯の温度が表示以上になるように温度を表示し、その次に括弧書きでその放置した時間を付記する。
  • この場合の一定時間については次のように定められている。

       卓上用魔法瓶 10時間

       携帯用魔法瓶 6時間

 

4.保冷効力

  • 室温20°C±2°Cにおいて2時間以上開栓して放置した製品に付属の中栓を施したときの中栓の下端まで4°Cの冷水(氷は含めないこと。)を入れ、水の温度が4°C±1°Cになったときに、その製品付属の中栓等をした後、6時間放置した場合におけるその水の温度が表示以下となるように温度を表示し、その次に括弧書きで「6時間」と付記する(ステンレス製携帯用魔法瓶であって保冷専用のものに限る)。

5.材料の種類

  • ガラス製卓上用魔法瓶では、中瓶のガラスについて常温における膨張係数が0.0000065以上のガラスを使用している場合は「ソーダ石灰ガラス」、同膨張係数が0.0000065未満のガラスを使用している場合は「ほうけい酸ガラス」の用語を用いて表示する。
  • ステンレス製携帯用魔法瓶では、内瓶について「ステンレス鋼」の用語を用いて表示する。
  • 胴部、蓋、コップ、口金、中栓、及び揚水パイプについては、消費者が理解しやすいように適切に表現をした上で、これらのパーツの主な部分に用いられた材料の名称を適正に表示する。
    なお、材料が合成樹脂の場合は、『合成樹脂加工品品質表示規程』第2条第1号の表で規定している「原料樹脂の種類」を表示する。

6.使用上の注意

  • 次に掲げる事項を製品の形状又は品質に応じて適切に表示する。
    1. 《イ》火のそばに置かない旨(外装が合成樹脂のものに限る)。
    2. 《ロ》中栓及び蓋は確実に閉めて使用する旨。
    3. 《ハ》熱いものを入れて使用する場合には横転させて中身が出ないように注意する旨(ガラス製卓上魔法瓶に限る。なお、横転させても中身が流れ出ないものを除く)。
    4. 《ニ》飲み物は、中栓下端より少な目に入れる旨(ステンレス製携帯用魔法瓶に限る。)。
    5. 《ホ》子どものいたずらに注意する旨。
    6. 《ヘ》丸洗いをしない旨。(ただし、丸洗いできる製品については、洗い方に係る注意事項を記載する。)
    7. 《ト》ドライアイス又は炭酸飲料は入れない旨。
    8. 《チ》熱い飲料物の保温用途での使用を禁止する旨(ステンレス製携帯用魔法瓶であって保冷専用のものに限る)。

7.表示者名等の付記

  • 表示した者の「氏名又は名称」及び「住所又は電話番号」を付記し、責任の所在を明確にする。

表示方法等

  • 魔法瓶ごとに、消費者の見やすい箇所に分かりやすく記載する。
    • ただし、使用上の注意については、本体から容易に離れない方法(下げ札、ラベル、取扱説明書の貼付け等)にて表示する。

▼表示例

参照:消費者庁ホーム > 政策 > 政策一覧(消費者庁のしごと) > 表示対策 > 家庭用品品質表示法 > 製品別品質表示の手引き > 雑貨工業品一覧表 > 魔法瓶https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_01.html

税関への輸入申告

■輸入届出の義務(食品衛生法第27条)

届出の対象となるもの 食品衛生法第27条のとおり、「販売の用に供し、または営業上使用する」ことを目的として輸入する 器具です。

食品衛生法第5条に規定する「販売」には、「不特定または多数の者への販売以外の授与」も含まれることから、不特定または多数の人に無償で配布するものも規制の対象になり、届出が必要です。

 

■届出が不要のもの

届出を要するか否かの判断は、その形状、使用目的、表示、その他関係書類等客観的な状況を勘案 して行われますが、次にあげるものは、原則として届出の対象外になります。

・器具の原材料

・通常の使用方法で食品に直接接触しない器具(装飾や置物など)

・国内において販売または営業上使用することを目的としないことが明らかな次のもの。

 

個人用:輸入した本人が自家消費する場合、外国からの贈り物、旅行者などがお土産用や 自家消費用に携帯して輸入する場合等に限られます。

試験研究用:試験室または研究室で試験研究に使用する場合に限られます。

社内検討用:社内で検討するために輸入する場合に限られます。

展示用:展示のみに使用する場合に限られます。

注意!展示会等で不特定または多数の人に使用させたり、配布する場合は届出が必要です。

 

■輸入届出が不要な場合、税関等に提出を求められた際に使用する「確認願」 について

問合せ先:厚生労働省検疫所 食品監視課

https://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/soudan/

参考情報:厚生労働省ホームページ>食品>輸入食品監視業務>手続き>各種様式「確認願」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html

 

輸入届出が不要のものについては、輸入者が税関へ輸入申告する際、食品衛生法の輸入届出に該当しない貨物である旨の証明である「確認願」を税関に提出するように求められる場合があります。輸入者は「確認願」(所定の書式)2部を検疫所に提出し、届出に該当しない貨物である旨 の確認を受けてください。 検疫所が届出不要の貨物と判断した場合は確認印を押印し、一部を輸入者に返却しますので、 これを税関に提出します。

 

販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、 厚生労働省令の定めるところにより、そのつど厚生労働大臣に届け出なければなりません


<届出の手続き(食品衛生法施行規則第32条) >

輸入者は、貨物の到着後直ちに(注)、定められた書式の「食品等輸入届出書」と材質や形状、色のわ かる資料等を添付して、貨物の通関場所を管轄する検疫所に提出しなければなりません。 輸入者は廃棄命令等の実効性を確保する必要があることから、日本に住所または居所を有しない「非 居住者」及び「税関事務管理人(関税法第95条に規定:日本に居住しない者の代理で、税関への輸出 入申告手続、検査の立会い、関税等の納付を行う者。)」が輸入の届出を行うことはできません。

■届出に必要な書類

□ 食品等輸入届出書

届出書の入手と記入方法は、厚生労働省または各検疫所の輸入食品関連ページに掲載。

厚生労働省⇒ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html

□ 製造者が作成した資料(製造者のレターヘッド、サイン・押印のあるもの)で以下の内容を確 認できるもの。

・品名(商品名、品番など)

・製造者名称と所在地、製造所名称と所在地

・材質(とくに食品がふれる部分)、形状、色柄を確認できる資料

・具体的な使用方法、商品説明書

・部品や組合せ製品の場合、パーツリスト、製品との関連性を示す展開図などの図面

□ 商品のカラー写真、カタログ等

□ 必要に応じて、過去に実施した自主検査の試験成績書

 

 

■届出方法

・ 通関業者(注)等に依頼し、提出を代行してもらう(必要書類の用意は輸入者)

・ 検疫所の窓口に持参する

・ 郵送により提出する

・ 輸入食品監視支援システム「FAINS」(予め厚生労働省に機器等の登録手続きが必要。)による オンラインで提出する

(注)通関業者とは、税関長の許可を受けて通関業を営む者。税関への輸入(納税)申告業務等を輸入者に代わって行う。

 

 

 ■届出窓口及び問合せ先:

(輸入届出受付)輸入する港を管轄する厚生労働省検疫所 食品監視課(全国32ヵ所) https://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/soudan/

(事前相談)輸入食品相談指導室(全国13ヵ所に設置)

 

■参考情報:厚生労働省ホームページ「輸入食品監視業務」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html 

 

 

関税・輸入税の確認

下記のサイトから関税率を調べることができます。

■実行関税率表(2023年4月1日版)

https://www.customs.go.jp/tariff/2023_04_01/index.htm

商標登録と知的財産権の保護

下記のサイトから商標登録や特許について、侵害していないかどうか、調べることができます。

■特許情報プラットフォーム

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/